こちらのワークスペースの雰囲気、素敵じゃないですか?
幅わずか2m程度のコンパクトなスペースの正面に、横幅いっぱいに近いサイズのワークデスクと大きな窓。ゆったり広々という感じの対極にあるようなワークスペースですけれど、必要にして十分な広さは確保できてると思いますし、左右から余計な雑音に邪魔されることなく、正面に向かって引き込まれるようにして作業に没頭することができそうで、これはこれでありな気がします。
頭上には、限りなくフラットに近い円盤型シェードの照明。
この形、耳鼻科の先生が使う額帯鏡にちょっと似てますね。ペンダントライトなのに、光を集めずに拡散して部屋全体を照らすような、しかも、向きまで調節できる照明って、ちょっとめずらしいですよね。特別な意図があったわけじゃないのかもしれませんけれど、ワークスペースの上部にこういう照明を1つ用意しておくと、手元のスタンドライトと組み合わせていろいろなバリエーションの明るさを作り出すことができて、細かい作業をしたり、光を当てて何かを確認したりしたいようなときに便利かも。
こういう感じのワークスペース、お父さんの書斎とか子供の勉強スペースとかのアイディアとして、結構使えそうな気がします。このまんまの、「細長い感じの個室」というのでもおもしろそうですけれど、もしかすると、廊下の突き当りとか、どこかに生まれた隙間的なスペースとかを使って作ってみたりするというのもいいかも知れません。仕切りのないオープンな作りになってると、背後からの他者の視線が暗黙のプレッシャー的にかかってきて、さらに集中力を高めてくれそうな気もしますしね。
個室にしないんだったら、夏の暑さと冬の寒さの対策だけは考えておかないと、春秋しか使えないスペースになっちゃいそうなので、そこらへんの検討はくれぐれもお忘れなく…。
( via kraakvikdorazio )
投稿者「branch_manager_WU」のアーカイブ
【曲面に囲まれた暮らし】サイロをリサイクルした円筒形の1LDK狭小住宅
この家、ちょっと住んでみたいですね〜。
一風変わった外観のこのお宅、なんでこんな形をしているかと言いますと、実はこの円筒形の躯体、元は穀物用のサイロなんです。
カンザス州の農場で実際に使用されていたこのサイロ、こちらにお住まいの建築家 クリストフ・カイザーさんが、ネットで売りに出ていたのを発見して、ご自身の自宅の躯体として流用することを思いついて購入したんだそうで。
カンサスからアリゾナのフェニックスまで、ピックアップトラックの荷台に乗って1800km近い距離を運ばれてきたサイロは、この場所で基礎の上に据え付けられ、
ドアや窓になる部分を加工され、
内部に柱を立て、梁を架け、フロアを作って、壁には断熱材を張って、内装が施されます。
1階はリビング・ダイニング・キッチン。
中央に置かれたダイニングテーブルは当然円形。キッチンもクローゼットも扇型にカーブして、壁に沿ってぴったりと収まりまっています。
リビングの頭上の吹き抜けを螺旋階段で上がった先がベッドルーム。
カーブした壁に囲まれたこういう空間って、包まれ感のような独特の面白い雰囲気がありますよね。
バスルームも当然扇型。
内部のスペースは実はこれだけ。つまりこちらのお宅、一軒屋にして1LDKなんですね〜。
ちなみに、具体的にどの程度の広さなのかを数字でみてみますと、建築面積230スクエアフィート/延べ床面積340スクエアフィートとのことですので、平米/坪でいいますと、建築面積が約21.4平米≒6.5坪、延床面積が約31.6平米≒19畳。若い方が住むような一人暮らし向け1LDK物件が専有面積30平米前後といったところだと思いますから、まさにそれとほぼ同等の広さ。これは一軒家としてはかなりコンパクトな部類に入るのではないかと…。
躯体が円筒形だから、丸く削られたコーナーの分、余計に床面積が小さくなるということもあるかと思いますが、仮にここに立方体の建物を建てたとするとどんな感じになるんですかね?
試しに計算してみますと、建築面積21.4平米ということは、円筒の半径は、床面積21.4を3.14で割ったものの√で約2.6m、直径だとその2倍ですから約5.2m。この土地のコーナーまできっちり使って四角い躯体の家を建てたとしたら、建築面積は5.2m×5.2m≒27平米≒8.2坪弱ということになります。
軽くSketchUpで描いてみました。
縦横各5.2m×高さ6mの立方体と、そこに内接する円柱です。
高さ6mはちょっと高すぎだったかも。
こちらが立面図。
実際のサイロの高さは、円錐形になった頭頂部を除くと5m〜5.5mくらいといったところでしょうか。
こうやって実際に比較してみると、確かにコーナーまで使ったほうが、純粋な床面積が広くなるのは当然ですけれど、実際に生活する上で使えるスペースという意味ではあまり変わらない気がします。つまり、逆にいうと、建築面積21.4平米/延床面積31.6平米(1:1.48)の円柱形の建物というのは、建築面積27平米/延床面積40平米(27平米×1.48)程度のスクエアな建物と似たイメージで使える広さがあるということなのかもしれませんね。
周りを曲面で囲まれ、内部を構成するものや置かれたものにも角が少ないということは、いろいろな面でのメリットも生みだしてくれると思います。
カーブした壁に沿って置かれた扇型のソファは、ただ並んで座るだけで、お互いが自然に軽く寄り添ったような位置関係にしてくれますし、周囲に尖ったものが少ないというのは、小さなお子さんや先端恐怖症の方に限らず、普通の人がリラックスしてなにげなく時間をすごすという、それだけのことに対しても、十分すぎるくらいのアドバンテージをもたらしてくれるのかなと。
リビングの壁面には、庭につながる幅2.7mの全開口スライドドア。
スライドドアの幅にあわせて扇型の縁側のようなスペースが設けられてまして、地面より50〜60cmほど高くなったこの部分で、そのまま座って寛ぐことができるようになってます。
庭の形も当然扇型。
直線で囲われていないこういう空間って、実際の広さ以上の独特の拡がりが感じられる気がしますよね。
そういえば、ずっと前に、アムステルダムの図書館の円柱型の本棚というのをご紹介したことがあったんですけれど、こういう形って強度的には結構期待できるでしょうし、土台と柱と梁の間の接合をしっかりとやっておけば、より高い耐震性能を必要とする建物としての用途にも使えそうな気がしますね。
普通の本棚に比べれば、限りなく倒れる可能性が低くて安全な気がしますが、万が一横転したら転がりそうで怖い…。重心の設計だけはちゃんとしておかないと。
「四角い土地を四角く使う」というのは、数値の上ではもっとも利用効率の良い土地の使い方だと思いますけれど、そこで実際に暮らす姿をイメージしつつ、そこに、数値には見えてこないさまざまなメリットを見出すことができるのならば、こういうのも選択肢の1つとしては十分ありなのかなと。
それにしても、手間とかコストとかをいろいろ考えると、なんにせよ贅沢な土地の使い方/家の建て方であることに間違いはないとは思いますけどね…。
( Photos via christophkaiser / SketchUp images ©juutakudesign )