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空を眺める細長いテラス



こちらのテラス、いい感じです。
こういう良さ気な雰囲気の家を見ると、どうしても、「立地が良いからな…」とか、「日本の大都市圏、住宅街じゃ無理かな…」とか考えてしまうんですが、そういった自分自身の考え方自体が良くないな、と思います。
せっかく家を買ったり建てたりするんだから、もっとワガママに自分の求めるものを追求したほうがいいと思いますし、実現できるかどうかは別にして、「こんなイメージのお家、素敵?」的なものを追い求めた方が良いと思うわけです。
実際にその理想を実現するのは結構大変なんですが、だからこそ、「自分の理想に近いもの」を沢山見て、イメージを具体的に固めて、現実とのギャップがどこにあるかということを考えて、というステップをしっかりと踏んでいくことが、1つの解決策になるのでは無いかと。
なので、今後も遠慮なく、こういった「ちょっと在り得ないかも」系の素晴らしいお宅を探していってみたいと思います。
で、このテラスですが、少なくとも作り的には、「作るのが大変」みたいなポイントは全くといって良いほど無いと思いますね。
テラスの幅はせいぜい1.5mといったところですので、家の形状にそれほど大きな影響を与えるとも思えませんし(ただし、一辺の幅を1.5m狭めてしまうので、どちら向きに作るかは、土地の形状と相談が必要だと思いますが)、屋根が有るわけでもなく、非常にシンプルな手摺、床もウッドデッキを張っただけですので、コスト的にもかなりリーズナブルに作れるのでは無いかと。
どちらかというと、「家のどこに作るか」、「何を目的につくるか」というあたりが、最大のポイントだと思います。
そこで暮らす人が、テラスで、どんな時間帯に何をしたいのか、何ができたら嬉しいのか、東西南北どちらに向けて作るか、その方向には何が見えるのか、春夏秋冬、それぞれの季節で、気候や周辺の景色や雰囲気がどうなるのか、というあたりを、実地の検証と想像力を交えながら、具体的にイメージすることが必要だと思います。
それに加えて、具体的なイメージが固まってきたら、家の中の「どのエリア」に作るか、も考える必要があります。
例えば、リビングとダイニングが一続きになっているレイアウトであっても、このテラスがに出るドアが、リビングにあるかダイニングにあるかによって、実際の生活動線的なものはかなり変わってくると思います。
例えば、このテラスを寝室の隣に作ったら、作りも場所も全く同じテラスだったとしても、(良い意味で)全く趣向の違ったテラスになると思います。
理想を言えば、土地を探している段階でそこまでの具体的なイメージを固めてから、そのイメージの要求する条件に合致する土地を見つけることができると良いですよね。
僕自身、土地を買う段階ではそんなことまで色々考えることは出来なかったんですが、実はそういったことを細々と検討してみることが、「家について考える」ということなのでは無いかと思います(考えることができた部分もありますが、もっともっと色々と考えることができたハズ、とも思います)。
いつか再び自分の家を建てることが有ったら(ありますかね…?)、その時には、許される限りの沢山の時間を掛けて、ゆっくりと色々な妄想をしてから土地を探して家を建ててみたいと思います。
Photo ©4mtr

パラパ – 壁の無いオープンサイドのダイニング 



これは全く偶然なんですが、前回紹介したイギリスのパッシブソーラーハウスのサンルームに続きまして、今回は「夏に涼しい」パッシブソーラーハウス、メキシコ南西部のパラパ、壁の無い茅葺屋根の家のダイニングキッチンをご紹介したいと思います。

独身時代、良くインドネシアのバリ島にサーフトリップに行ったのですが、バリ島の安価なホテル、ロスメンなどにも、こんな感じのダイニングが設けられていることが多かったですね。
バリのホテルやロスメンは、大抵は中庭にプールがあって、そのプールを囲むように、こういったオープンサイドのダイニングが配されています。
朝食前にサーフィンに行って、帰ってきたらプールで泳いで潮を流して、そのままダイニングに入って朝食をとって、という感じで始まる一日が、とてものんびりとした良いリズムで、心も体もリフレッシュできた記憶があります。
話が脱線してしまいましたが、前回のイギリスのガラス張り屋根のロフトが、「冬の暖かさを求めたパッシブソーラーハウス」だとすれば、こちらのパラパは、「夏の涼しさを求めたパッシブソーラーハウス」の一例と言えると思います。
考えてみれば当たり前の事なのですが、パッシブソーラーハウスの様な、「その土地の自然環境をうまく利用する」住宅の特徴というのは、そもそもが、地域地域の持つ気候特性に応じて発展してきた伝統的な工法が実現する機能や特徴と似通っていたり、または同じである部分が多いのだと思います。
このパラパはラテンアメリカの伝統的な住居の一つなのですが、前回、イギリスのロフトのサンルームを見た時と同じように、この写真の撮られた場所、メキシコ ハリスコ州ヤラッパの気候を調べてみたいと思います。
ヤラッパにほど近い、同じハリスコ州の州都グアダラハラの気候を見てみますと、春から秋は平均最低気温は15度前後を上回り、平均最高気温は20度台後半から30度前後です。
平均気温が最も低い1月であっても、平均最低気温が10度前後、平均最高気温は24度前後と、冬の時期を含め、一年を通じて非常に温暖な気候であることがわかります。
また、降水量は、雨の多い6月から9月の4ヶ月間は月間200mm前後とかなりの量の雨が降り、それ以外の季節は月間で20mmを下回る程度にしか雨が降りません。
この様に温暖で過ごしやすい気候の中で、大きな庇によって南中高度の高い夏の太陽からの日差しを防ぎ、壁が無く通風の良い茅葺きの建物というのが、「暑さを遮る」住宅として重宝され普及してきた、という背景が良く理解できます。
これに対し、日本の気候について少し考えてみます。
日本列島は東北から南西に掛けて細長く国土が広がっていますので、同じ日本国内といえども、地域地域で気候区分も異なり、平均気温にもかなりの開きがあります。
その国土全体を考えてみても、沖縄などの南部の一部の地域を除いて冬はかなり気温が下がりますので、このパラパの様な住居を日本国内の住宅にそのまま適用するのは正直難しいかと思います。
ただし、「全く同じ目的、機能を求めて」用いるのでなければ、この様な様式の建物も、家の中の「面白みのある場所」として作り込むことは可能かもしれないです。
夏場は当然、その特徴である「夏涼しい」ダイニングとして利用することが可能ですし、例えば、関東以南の、冬でも日中の気温が5度から10度程度まで上がる地域であれば、ストーブや屋外暖炉などの暖房設備を併設することで、一年を通じて活用できる屋外ダイニングとして利用することは可能かもしれません。
日本の伝統的な建具である障子や襖を用いた囲い(壁)を作って置いて、夏場は開け放し、冬場は閉じて、ということによって気温の変化に対応する、というのも一つの手の様に思えますが、そうすると、まさに日本の伝統的な建物の建築スタイルに近い形になるわけです。
いっその事、ガラス張りのサンルームの様な屋根の上に、取り外せる様に萱葺き屋根をかぶせておいて、春先から秋にかけては茅葺屋根のパラパとして、冬場は取り外した茅葺き屋根を壁として用いて、茅葺き「壁」のあるサンルームにしてしまう、というのはどうでしょう(なんの検証もしていない妄想ですので…)。
Photo ©ehoyer