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何だか妙なタイトルをつけてしまったんですが、記事を書きながら、「そんなイソップ童話があったような...」と思ったもので。


こちらの写真、テキサス州サンアントニオの建築事務所"Lake | Flato Architects"が手がけるプロジェクト、"PORCH HOUSE"のベランダなんですが、素材感剥き出しのベランダと、バックに広がる広大な雰囲気の景色のマッチ度合いが素晴らしいと思いまして。


周囲に全然人がいないような広大な空間に、1つポツンと建つ家、良いですね。

東京生まれ東京育ちで一度も東京から出たことがない僕は、こんな家に憧れてしまう部分があるわけです。


別荘的なものでも良いかもしれませんけれど、やはり「ここで暮らす」方が断然魅力的ですね。

毎日、ここで目を覚まして朝ごはんを食べて、昼間は何故か何時間も掛けて都会へ仕事に行って、で、夜になるとまた帰って来て夕ごはんを食べて、ここで寝て。



仮に通勤に2時間、3時間かかるとすると、そういった面は相当大変そうではあります。

でも、こんなお家に住んで、ここから都会まで働きに出る、という生活をおくったら、金曜、土曜の夜に自宅の外の山々の風景を眺めながら、今の僕には想像もつかない「何か」感じることができるのではないか、という気もします。



家族がいると、家族の生活、子供の教育などの問題もありますので、ここまで思い切るのは難しいかもしれませんね。

でも、例えば子供がいない若いご夫婦などであれば、いつか子供ができて、その子が幼稚園に上がる3歳になる年くらいまでの機会にチャレンジしてみる手もありかもしれません(その位若い方だと、尚の事、職住接近の方が魅力的に感じるのかもしれませんけれど)。


これをあとからチャレンジするのは、結構大変だと思います。

子供がいれば、子供が大学生になるくらいまでは色々と制約があるでしょうし、そう考えると、50代、60代という引退が近づいてきたような年から、というあたりの年齢になってしまうのかな、と。

それはそれで悪くないとは思うんですが、「ものすごい田舎に暮らしていながら都心で働く」、という強烈なギャップを楽しむのとはまたちょっと違うと思いますし。

そういった生活を存分に楽しむためには、それなりのパワーも必要でしょうしね。


そもそもは、別にこの"PORCH HOUSE"というプロジェクト自体に興味があったわけでは無かったんですが、こんなことを妄想したり、原文記事を読んだりしていたら、"PORCH HOUSE"プロジェクト自体にも興味が湧いて来ました。


"PORCH HOUSE"プロジェクトというのは、「気候、立地や周囲の風景までを含めた周辺環境にマッチした住宅を、デザイン性に優れた形で、且つ、低コストでつくる」ことに取り組んでいるプロジェクトなんだそうです。

コンセプトは"sustainability(持続可能性)"であり、言い換えるならば、「環境と一体化した住生活の提供」という感じでしょうか。


その特徴を理解するためには、設計/施工方法について説明させて頂くのが良いのではないかと思いますので、ちょっとそこら辺のご説明を。


設計/施工の概略はこんな感じです。

"PORCH HOUSE"プロジェクトでは、リビングやベッドルームなどの居室の躯体はモジュール化されたものを用います。そして、通常の建築施工で行う大部分の工程を工場で実施して、組み上げたものを現地に搬送して設置施工します。

そこに、"porch"と呼ぶ「屋根のある屋外箇所」を、現地でアレンジしていきます。"porch"には、躯体から張り出した大きな「庇」の様なものや、離れて設置された躯体間をつなぐ「渡り廊下」の様なものなど、様々な種類があり、これを現地の「環境」にあわせて組み合わせることで、気候や立地、風景などの「環境」にマッチした家を構築するわけです。

建材には、木材やガルバリウムなど、「耐久性やメンテナンスの面でのメリットがあり、環境に与える影響が少ないもの」を用います。


この手法には幾つものメリットがあるそうです。

・躯体をジュール化して工場で組立を実施することで、部材の無駄の削減、現地への搬送コストや施工コストの削減が実現できます。これは、費用削減の効果と、環境へ与える影響を削減するという2つの効果を産みます。

・"porch"を組み合わせることで、居室内に入り込む太陽光をコントロールしたり、居室と外部環境のつながり度合いをコントロールし、結果として、「夏涼しく、冬暖かい」省エネルギー効果を産みます。

・"porch"は省エネルギーにつながるだけではなく、周辺環境により近い場所で生活をおくることができる、「居室内と屋外の中間エリア」としての魅力も持っています。


...なんだか、"PORCH HOUSE"プロジェクトの宣伝の様になってしまいましたが、僕は別に"PORCH HOUSE"プロジェクトの回し者ではありません。


でも、こういった取り組みってなかなか面白い取り組みだと思うんですよね。

家がエコであるかべきかどうかはともかくとして(その方が良いとは思いますが)、住んでいる人にとっては、「夏涼しく、冬暖かい」、「省エネで」、「周辺の(良い)環境と、より近く暮らせる」家の方が魅力的なのは当然だと思いますし。


伝統的な日本家屋の「庇や開口部、縁側、渡り廊下などを使って日光と通気をコントロールする」という考え方とも、非常に共通点が多いと思います。

この"PORCH HOUSE"プロジェクトをそのまま日本に持ち込んでも、結構使える部分が沢山あるのでは無いかと考えると、そういった点も興味深いです。


興味がある方は元ネタサイトも覗いてみてください。





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こちらのお家、周囲を取り巻く環境と、家の随所に施された外部へとつながる「開口部」の組み合わせが素晴らしいなと思いまして、ちょっとご紹介をさせて頂きたいなと。


どんなところが「外部に開かれて」いるか、と言いますと、例えば2階のリビング脇のテラスはこんな感じになってます。


リビングとテラスの間は全面開口型ガラススライドドアになってまして、スライドドアからウッドデッキのテラスに出ると、丘の中腹に建つ家の周りの森が、まるで自宅の庭の様にすぐそこに広がっています。


ロケーションはアメリカ西海岸、ロサンゼルスの北西に位置するノースリッジの郊外でして、オーナーは実は、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』の撮影監督を務めたクラウディオ・ミランダ氏なんです。

アメリカ東部の長閑な街、ケンタッキー州とインディアナ州の州境に近いマウントワシントンで育ったミランダ氏は、この家と周囲の環境の持つ素朴な雰囲気に惹かれて、通りから玄関まで実に60段もの階段を上る必要があるこの家を25万7千ドル(≒1ドル80円換算で2千56万円)で購入しました。

購入時期は1994年のノースリッジ地震の後だそうです。

アメリカの不動産相場にあまり詳しく無いのですが、郊外とはいえ、カリフォルニアでこの広さの家がこの価格というのはかなりリーズナブルだと思います。

そこら辺には、やはり大規模な地震の直後というのが影響していたんですかね。


この家、ミランダ氏が購入した頃にはまだまだこんな感じでは無かったんだそうで。

ミランダ氏曰く、"It was a Mediterranean mutt falling down its steep hillside."、意訳:『急峻な丘の中腹に転がり落ちた野良ポテンゴ犬の様な』お家だったそうです(翻訳にちょっと自信が無いんですが、"mutt"というのは『雑種犬』とか『野良犬』の様な意味で、"Mediterranean"というのは『地中海』とか『陸に取り囲まれた』という様な意味です。この"Mediterranean"の訳が中々苦しく、最初『森の中の』という様な意味で訳すべきかな、と思ったんですが、地中海原産の犬に『ポテンゴ』という猟犬がいまして、そこら辺から『地中海の雑種犬=野良ポテンゴ犬』、つまり、『血筋は良い野良犬』みたいな意味かな、と...。違ったらすいません...。ニュアンス的には大きく外れては無いと思うんですけど)。


ミランダ氏は、この家を手に入れて実際に住みながら、家にゆっくりと手を入れていきます。


まず手始めは2001年、サンタモニカの建築事務所"Minarc"に、2つあるバスルームの内の1つ、2階にある窓の無いバスルームのリノベーションを依頼しました。

依頼を受けた建築家さんは、バスルームの壁はほぼそのままにして、天井を改造するアイディアで対応します。

屋根取り壊して壁の上部に明かり取りの窓を付け、更に天井にも天窓をはめ込んだんだそうです。


窓が無く、薄暗くて息の詰まるような空間だったバスルームが、光にあふれる開放感のある空間に生まれ変わっています。

天井は元の状態よりも1.2mも上に持ち上げられているそうです。

このバスルームでシャワーを浴びたら、太陽の下で水浴びをしている様な爽快な気持ちになれそうですよね。


このセンス溢れる素晴らしいバスルームの出来栄えをみて、ミランダ氏は建築家さんにもう一つのバスルームのリノベーションも依頼します。


もう一つのバスルームは、マスターバスルームにも関わらず、ウォークインクローゼットを通らないと入れないバスルームだったんだそうで...。

このお家、今でこそ非の打ち所のない素晴らしいお家に仕上がってますが、リノベーション前は相当問題のあるお家だったっぽいです...。


で、建築家さんは、その「マズい」バスルームを大胆に改造します。


クローゼットを潰してバスルームを拡張し、バスルームの躯体に面する壁を取り払って、ガラスのスライドドアに置き換えます。

スライドドアを開けると、家の周りを取り囲む森が目近に広がっているという、「まるでアウトドア」なお風呂。

1つ目のサブバスルームの光溢れる感じとはまた違った、落ち着いた雰囲気のあるバスルームに仕上がっていて、こちらも相当良い感じです。


こんな感じの2つのバスルームを、その日の気分で使い分けることができたら最高だと思います。


この2つのバスルームのリノベーションに満足したミランダ氏は、この建築家さんに家全体のリノベーションを頼むことにしたんだそうです。


そこから先のリノベーション内容はこんな感じです。


最初にご紹介したリビング脇のテラスを作り、寝室の脇にも広く大きなルーフテラスを作りました。

寝室脇のウッドデッキ、良いですよね。

夜寝る前も朝起きた後も、このテラスに出てちょっとのんびりお酒を飲んだり新聞を読んだりしたら、それだけで日々の生活に相当な潤いをもたらしてくれそうです。


壁をガラスのスライドドアに置き換えたのは、テラスやお風呂場の様な外に出られる場所だけじゃありません。

色々な場所の壁をスライドドアに置き換えて柵を取り付け、いつでも全開放にして、室内に居ながらにして周囲を取り囲む自然を感じ取れるようにもしてあります。



その他にも、大々的且つ抜本的にリノベーションを行ったそうです。

1階フロアのほとんどの壁を取り払って大きな1つの空間に作り直したり、建物の外装を、できる限り環境に与える影響が少なく、且つ、耐久性のある素材である、セメントにリサイクル繊維を加えたコンクリートパネルを用いて修復したりもしています。


ちなみに、このコンクリートパネルを用いた別の理由として、「従来のコンクリートパネルよりも軽量である」ということもあったんだそうです。

「丘の中腹」への建材の荷揚げ、という実用面でのメリットも考慮して、軽量なものを選定してくれたそうで。


ここまで考えてやってもらうと、施主冥利に尽きると言いますか、既にリノベーションの範囲を超え、新規施工設計のレベルをも超えている様な...。


このお家、ホントに素晴らしいと思うんですが、家の全般に共通するキーワードとしては、タイトルにも入れさせていただいた「外部に開かれた」部分になってくるのかな、と。

そして、郊外の丘の中腹という立地だからこそ、この様に外に向けて開かれた家を思うがままに作れるわけです。

そういった意味では、ロケーションとニーズの整合性がベースになっているわけで、そもそもの土台としては「ここに家を」と考えたミランダ氏のセンスありきなんでしょう。


で、その意向を受けてリノベーションを担当した建築家さんのお仕事もコレまた素晴らしく、周囲の環境の良さをふんだんに取り入れた、周囲の環境と共生する非常に秀逸な家として仕上がっていると思います。


このお家、1つのリノベーションのケーススタディとしてみてみると、リノベーションの過程、その結果としての家の仕上がり、どちらも素晴らしいと思います。

ですが、原文記事を読み込んでいって思ったんですが、双方の素晴らしさの中でも、リノベーションの過程の方に、より興味深く感じさせられる部分がありましたね。


施主であるミランダ氏は著名な撮影監督です。

著名な撮影監督というと、「溢れ出るような自身のアイディアを基に建築事務所にリノベーションを依頼」してしまいそうなイメージがありますが、ミランダ氏は、建築家さんの仕事を見極めつつ、じっくりと時間をかけてリノベーションを進めています。

自身の意向を伝えつつも、建築家さんに対して、自分のアイディアでリノベーションを遂行する「手足」としての役割を求めるわけでは無く、あくまで、施主の意向を汲み取って自分なりのアイディアを出し、それを遂行してくれる「パートナー」としての役割を求めています。

これってとても重要なことだと思うんです。


建築家さんに仕事を依頼する以上、先方を尊重しなければ当然その人の良さは引き出せないわけで、「その人のセンスに任せる」ことが必要なわけです。

しかし、例え優れた建築家さんであっても、自身のニーズや好みと合わなければ満足の行く結果は中々得られないでしょうし、そういった意味では、実際に自分の家に対してどのようなアイディアを出してくれるかを実際にみてみる、というステップが必要です。

そのステップを踏んだ上でこそ、「任せる」ということができるようになるわけです。


建築家さんに2つのバスルームのリノベーションを依頼することで、ミランダ氏は自身の先方への「信任」を試し、信任に値すると判断した上で、自らのアイディアを前面に出すのではなく、建築家さんのアイディアでリノベーションを進めてもらいます。


時間もかかりますし、コレは中々できることでは無いと思います。

当然新築ではこういった方法を取るのは難しいですし、こういったことができるのもリノベーションならでなんですが、何よりも、ミランダ氏の取った手順が、建築分野のみに限らず、人に何らかの創作活動を依頼する手順として非常に秀逸だったのかな、と。


秀逸な施主と秀逸な建築家さんが秀逸な手順を踏んで、焦らず、じっくりと時間をかけて行ったリノベーション、という、リノベーションのお手本の様な物件だと思います。


ちなみにこのお家、総リノベーション費用は取材時の2009年段階で既に50万ドルに上り、そしてリノベーションはまだまだ終わっていないんだそうで、庭に3階建てのプールハウスやスタジオの建築計画も策定中とのこと。

ホントに、「時間をかけてじっくりとやる」のお手本の様なリノベーションです。





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