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物件の相場と住む人の要望の乖離



これが「住宅のデザインに関すること」なのかどうかちょっと疑問ではあるんですが、オーストラリアの某物件を見ていて色々と思ったことがあったので、ちょっと書いてみたいと思います。

こちら、オーストラリア シドニーのキャンパーダウンという街にある1LDKのマンションです。
家族持ちの僕がこういったところに住むということはもう無いかもしれませんが(子供たちが独立してコンパクトなところに転居したり、あまり考えたくないですが何らかの事情により独りの身になったり…、ということはあるかもしれませんけれど)、独身だったり奥さんと二人の新婚生活とかだったりしたら、こんな感じのところに住んでみたい気がします。
柱や梁、内装などに木材を多用しているところが、暖かみのある独特の雰囲気につながっていて良い感じだと思います。
ベッドルームも、面積としてはそれほど広くは無いですけれど、隣接するLDKとの仕切りの背が低いので、結構開放感がある空間になっています。
間取り的に言うと、リビング・ダイニング・キッチンが幅3.6m×奥行き5.6mで20平方m12畳、ベッドルームが幅3.6m×奥行き3.2mで11.5平方m7畳程度。4、5畳くらいのサイズの結構ゆったりとしたバルコニーもついてます。
バス・トイレはトイレ付きバスルームと、それとは別にもう一つトイレがあります。

間取り的には1LDKになってますけれど、クローゼットや収納で空間を仕切ってこの間取りを作っているだけで、実際には大きな一つの空間のワンルームの様なお部屋です。
全体の広さとしては60平方m弱、16、7坪程度の専有面積という感じでしょうか。
この物件自体は賃貸物件では無く販売物件でして、価格は45万オーストラリアドル≒1豪ドル76円程度として3,500万円位。
で、ココらへんにちょっと興味が湧いてきたので、東京都心部で同じようなマンションがどの程度の相場で売られているのかを調べてみました。
エリアや駅からの距離、築年数なんかでも結構開きはあるんですが、東京都心部で働く若手が職住接近の生活を送ることを想定して、山手線沿線から私鉄や地下鉄に乗換えて3駅程度、という条件で調べてみたんですが、50平方mから60平方m位の広さの物件で、3千万円台後半、という位になるみたいで、このオーストラリアの物件と似たような感じなのか、もうちょっと高いのか、という位の様です。
この価格、高いのか安いのか相場的にはよくわからなかったんですけれど、個人的な感覚で言えば(東京の場合ですよ)、独り身かせいぜい二人でしか暮らせないこのサイズに対して3,500万円を出すか、というとちょっと疑問な感じが。
こういった物件に住もうと考える人というのは20代から30代前半くらいの若手の方だろうと思いますので、確かにこのサイズというのは調度良いのかもしれません。
でも、そういった世代の方というのは、程なく結婚したり子供ができたりというイベントを控えているわけで、10年後のライフスタイルにマッチしているかというと、ちょっと違うのかな、と。
そうすると、こういったマンションに暮らすことができるのは、子供たちが独立した後、リタイア後、ということになるんですかね…。
それはそれで、まだ40歳にもなっていない身としては、何だか寂しい気もします。
で、じゃあ賃貸だったらどうなんだ、ということで、こちらも同じく山手線から乗換えて3駅位のあたりで考えてみますと、こちらも多少の開きはあるものの、一坪1万円位、60平方m≒18坪程度と考えると、月18万円の家賃ということになるんでしょうか…。
一人暮らしで家賃18万円払う位なら、マンションか家を買ったほうが良い様な気がしますね…。
で、何だかだらだらと脱線気味にきてしまったんですが、そうするとこういった広めのマンションに都会の若者は住めないのか、というあたりが気になったわけです。
僕自身も、独身時代は港区の職場まで30分くらいで行ける都心部のマンションに住んでましたが、専有面積30平方m位の1LDKで家賃が月10万円ちょっと、それに加えて駐車場代も月に3万円位払ってました。
決して広いマンションではなかったですけれど、平日は深夜まで働いて家には寝に帰るだけの生活を送っていたのに、結構贅沢をしてたな、と思います。
でも、このマンションの半分くらいの広さしか無いという…。
親密に接近したい人がお家に来るのには都合が良いかもしれませんけれど、男の先輩が酔っ払って泊まりに来たりした日にはムサくてしょうがなかったですね。
それが現実なわけです…。
それが現実と言われてしまえばそれで話は終わりになってしまうんですが、ココらへんを解消できたら何だかみんな幸せなんではないかな、と思いまして。
と言っても、実際ココらへんは土地の持つ利用価値とかそれに関わる産業のコスト構造の話とかそういったものにも絡んでくる話ですので、それが解決できたら、恐らく僕は大金持ちになれてしまうんだろうという位の話なんですけれど…。
乾いた大都市で独りモクモクと働く若者たちは、出来る事ならばこの位のマンションに自分の給料で無理なく住めるくらいの生活を送りたいと思っていると思うんですよ。
そのためには、都心部の家賃を今の半分か、せめて3分の2くらいにしてもらわないとイケないわけです。
逆に言えば、そういった物件を作る方法を確立出来れば、多くの人がこんな感じのマンションに住むことができて、こういったマンションを真剣にデザインしたり、面白みのあるマンションを作ったり、というあたりが新しいジャンルとして確立されて、長く残せる面白い物件を作ってみたり、じゃ、建物は賃貸だからリフォームやリノベーションのサイクルとしてどう考えて、とか、そういったことが色々と始まったりすると面白いかな、と。
で、そういった状態になってくると、この物件みたいに「内装に凝った面白い物件を作る」ということがより活発になって、造る人も住む人も幸せになれるんでは無いだろうか、とか漠然と思ったりしたわけです。
そうできない現状の根本にあるのが、単純に不動産業界の産業構造や土地の価格の問題だとすれば、産業全体でのコスト削減や、技術革新と規制緩和によって土地に対して作り込める床面積を拡げたり、というあたりが一つの解になるはずなんですけれど、何時まで経ってもそういったことが起きないのは何でなんでしょうかね…。
長々と妄想にお付き合いいただきましてありがとうございました…。

オートバイ修理工場のリノベーション



このリノベーション住宅、「あ、倉庫のリノベーションってこんな風にもできるのね」というイメージが結構わかり易かったもので、ちょっとご紹介させていただきたいなと思いまして。

コチラ、オーストラリア シドニー郊外にある古いオートバイ修理工場をリノベーションしたオタクなんですが、何というか、作りとか広さとかが日本人である僕らからしても非常に「現実的」な感じがします。
倉庫のリノベーション物件とかって、そもそもベースとなっている工場や倉庫のサイズが「床面積300平方メートル」とかだったりして、そういった物件を見るたびに、何というか日本の都市部に住む方が個人宅として用いるにはちょっと現実離れしている様な印象を受けることが多いと思ってたんです(ま、そもそもリノベーション物件が普通の日本人の「現実」に近い場所にあるのかどうかというあたりがずれている気もしますが)。
で、こちらの工場なんですが、広さは土地面積1000スクエアフィート、建物の床面積は800スクエアフィートだそうで。
リノベーションする前の工場内部はこんな感じです。
メートルに換算すると、土地が12m×7.5mで90平方メートル27坪、建物の床面積が12m×6mで72平方メートル22坪といったところでしょうか(縦横は適当に想像しただけですが)。
日本の小さめの住宅位の大きさしか無い、ホントにこじんまりとした工場だったわけです。
それをリノベーションすると、こんな感じになります。
外観は確かに「一風変わった狭小住宅」なイメージがあるかもしれません。
コレを住宅地のなかに作るのはちょっと勇気が入りますが、工場のリノベーション物件という段階で既に住宅地の中というロケーションの可能性は低そうなので大丈夫でしょう(商業地の中で余計に色々気になる、という可能性は高そうですけど…)。
「リビングで寛いでいるところが外から丸見え」みたいな感じになりそうです。
でも、開口部の向きをしっかりと考えたりルーバーで目隠しをしたりすれば大丈夫そうな気もします。
倉庫や工場だとベースの建物の開口部はそもそも通りに面していることが多いでしょうから、ルーバーで上手く視線を遮るという方が現実的でしょうかね。
内部はこんな感じです。
コチラがリビングダイニングです。
で、そのリビングダイニングエリアから逆エリアを見るとこんな感じになってます。
簡単に言いますと、床面積22坪のウチの7割位のエリアはそのままリビング・ダイニングとして使用してまして、残りの3割のエリアは内部にもう1フロア追加して2階構造にしてあります。
全体の7割と考えると、リビング・ダイニングの広さは30畳位というところでしょうか。
で、2階構造にした部分はこんな感じになってます。
1階は書斎というか、ワークスペースといった方がしっくりきますかね。
建物全体の3割のエリアを使っている想定だと13畳位のスペースになるんでしょうかね。
書斎が13畳もあったら気分が良いでしょうね。
大きな本棚と大きな机をおいて、広々としたスペースを余裕を持って使えたら最高ですね。
ちょっと贅沢すぎる気がしますけれど…。
実際には半分位のエリアがウォークインクローゼット的な場所にされてしまいそうな予感がします。
で、2階には寝室とバスルームがあります。
このエリアが寝室で、写真の正面に見えている壁の向こうがバスルームです。
この寝室とバスルームも、1階のワークスペースと同じく3割相当のエリアですので、あわせて13畳位という計算です。
寝室の脇はこんな感じにメッシュにしてあって、下のワークスペースにも光と空気がきちんと流れるようになってます。
建物全体では、30畳のLDKと13畳のワークスペース、8畳位の寝室と6畳位のお風呂、という位の2LDK住宅です。
延べ床面積で30坪、60畳位ですかね。
決して広いわけでは無いですけれど、夫婦2人と小さなお子さん位だったら、十分な位の広さがあります。
子供が大きくなってきたら、リビングダイニングエリアを改装してもう一部屋増やせばなんとかなりそうですし。
ちなみにこのお宅、日本の”small-space Living”を参考にしているんだそうで…。
ちょっと複雑な気分です。
でも、この位のサイズの倉庫だったら普通のサラリーマンでも買えちゃいそうな気がしますし、それで実際にこのくらいのお家が作れるんだったら思い切ってやってみたい気がしてきますね。
( via REMODELISTA )