「カテゴリ:良いなと思った家や内装、家具など」の最近のブログ記事



日本の夏は暑さが厳しいわけで、西日のあたるテラスというと、ちょっと躊躇してしまう印象があります。

でも、じゃ、「テラスはどっち向きが良いの?」という話になるわけですが...。


こちらのテラスは真横から太陽が登ってますので、完全に真南向きですね。

自宅にこんな雰囲気のテラスがあったら良いんですが、日当たりとかは季節と方角で随分変わりますので、色々と検討が必要です。


地球の地軸は23.4度傾いてまして、太陽の南中高度(太陽が真南に来た時の太陽の仰角)は以下の計算で求められます。

夏至:90度−観測地点の緯度+23.4
冬至:90度−観測地点の緯度ー23.4


例えば東京は北緯35度位ですから、夏至の南中高度は78度位、冬至の南中高度は32度位、ということになります。


家を建てる時にテラスをどちらの方向に作るのが良いか、という話は、この夏と冬の南中高度、つまり、それぞれの季節に太陽がどの位の高さを通過していくか、という話と密接につながりがあります。


最初は、真北側が道路に接した土地で、その真北側にテラスを作る場合で考えてみたいと思います。


まず始めに、建物を建てる際の建築基準法などによる制約について確認します。

建物を立てる際には、「北側斜線」という制約を守らなければいけません。

これは、「自宅の北側のエリアに対して、貴重な光を遮り過ぎてはいけないよ」という目的で作られている取り決めです。

建築基準法によって全ての建物に対して何らかの北側斜線の制約が課せられ、例えば第一種及び第二種低層住宅専用地域の場合、北側の土地境界から垂直に5m上げた点から、縦横比 1.25:1の比率の斜線の中に収まるように家を建てなければいけません(第一種及び第二種中層住宅専用地域の場合は、垂直に10m上げた点から同じ比率になります。都市部においては、第一種高度地区、第二種高度地区などの別によって、更に厳しい北側斜線が課せられます)。

この縦横比1.25:1の北側斜線の角度は、おおよそ51度程度です。


こういった斜線の制限として、もう一つ、「道路斜線」というものがあります。

道路斜線は、前面道路の向こう側(向かいの人の土地の境界)から、北側斜線と同じく縦横比1.25:1の角度で引かれた斜線にかからない様にしなければいけない、というものです。

前面道路の幅が4mの場合、斜線の傾きは1.25:1ですので、4m横に進む間に高さは5m上がることになり、北側道路(真北向き)の土地の場合は道路斜線と北側斜線は完全に一致することになります。

で、実際に、真北道路の土地の北側高さ2.4mの場所に、奥行き2.8m、幅5mのテラスを作ったとすると...。

Google SketchUpで軽く書いてみました。


冬至の日の正午前後、32度の高さからの太陽光は見事なまでに自宅に遮られて、テラスは100%日陰となってしまっているわけです。

自宅どころか、通りを挟んだ向かいのエリアまで、かなりの範囲が影になっています。

上記の図は8.5mの高さの家を建てたパターンなのですが、テラスのある地上から2.4mの高さでは、自宅建物から北側9.75mの範囲までが建物の影になります(冬至の日、正午前後に2.4mの高さで日があたるのは、8.5mの建物から北側へ約10m以上離れた場所、ということです。高度0mの地上の場合はもっと遠くまで日陰になります)。

これが仮に180度逆の方向、南道路の土地で、南側にテラスを作っているとすれば、道路を挟んだ向かいの家は傾斜規制を守って家を建てているわけで、32度の高さからとはいえテラスはほぼ全面に光が入り込むことになります(厳密には、向かいの家が土地境界ギリギリに斜線制限いっぱいの家を高さ8.5mで建てた場合、冬至の南中時、テラスの床に光はあたりません。丁度テラスと自宅建物の境界が日向と日陰の境界になり、テラスは、空中は日向、床は日陰、という状態になります。建物の高さ8.5m÷1.25=6.8mということで、道路の向かい側境界から6.8m離れた場所からが光が入るエリアになります。6.8mから道路幅4mを引いた道路との境界から2.8mの場所、テラスと自宅建物の境界が日向と日陰の境界、ということになります。丁度上記の絵を南北逆に見た形になるわけです)。


では仮に、北側道路の土地で南側にテラスを作るとどうなるのか、ということですが...。

これもあまり良くありません。

周辺の住宅がどう建っているか、という点に依存するのですが、北側道路ということは、大抵の場合は南側にはお隣さんのお宅が建っていることになるわけです。

当然隣の家も北側斜線を守って家を建てるわけですが、実際にはこんな感じになります。


家の南側に、先程と同じく高さ2.4mの場所に奥行き2.8mのテラスを作ってあります。

で、南側の隣地境界はテラスの先端から更に1.5m先で、隣の土地に8.5mの高さの家が建っていた場合、この真南向きテラスは冬至の南中時刻に100%隣の家の北側斜線の下に入り込んでいることになります。

つまり、冬至の日の正午前後、真南向きのこのテラスには全く光があたりません。

「南道路の土地が良い」というのは、「南側のエリア、日当たりを有効活用できるから」ということなわけです。


ちなみに、真東、真西向きにもテラスを作って検証してみたところ、どちらも、冬至の南中時刻において幅7.15mのテラスのうち2.65m程度が日陰となり4.5m程度が日向となりました。

これはそれなりに日当たりが確保できていると言えそうです。



で、めでたく真南向きの土地を買ってその南側にテラスを作ることができた方は良いとして、大抵の場合、物事はそんなに上手くいかないわけです。


次は、「気に入った土地が南側道路でなかったらどうしたら良いのか」という点を考えてみたいと思います(あくまで住宅が密集している都市部、住宅街などの話です)。


まず最初に、道路の方向にかかわらず、東西南北それぞれの方向のテラスが、夏至と冬至の時期でどういった状況になるかを整理してみます。


   夏至  冬至
東  ◯   △
西  暑い  ◯
北  暑い  寒い
南  暑い  ◎


かなり僕の主観も入っているのですが、ちょっと簡単に説明させて頂きます。


まず夏至ですが、コレはどの方向も暑いです。

なので、どっちみち日除けは必須です。

が、東側だけは、比較的涼しい午前中に日があたって、どんどん暑くなる午後は日陰になる、という意味で◯にしてあります。

結局のところオーニングやタープなどの日除けが必要であろう、という意味では、正直どこも一緒な気もしますが。


次に冬至ですが、これはダントツで南向きが良いかな、と思います。

一日中ある程度の日差しが差し込むので、天気の良い日であれば、真冬であってもある程度の暖かさが望めます。

逆に北側というのは、先程も見たように、わずか32度という低い地点を通過する太陽の光は全く当たらないわけで、寒くて仕方が無いテラスになるでしょう、と。


冬至に於いて良さそうな方向の次点は西ですね。

西日といえども貴重な日差しであることに変わりは無いわけで、比較的気温が上がってくる午後の時間帯に西日が差し込むという意味では、こちらも比較的温かい日であれば、真冬であっても「テラスに出よう」という気になれるかもしれません。

東側も同様に午前中は光が差し込むのですが、気温の低い午前中に光があたっても、寒いことに変わりがないかな、ということで△とさせて頂きました...。


ここでもう一度話を戻しますと、結局、暑い夏場の日当たりというのは、正直あまり大きな要素では無いかな、と。

どちらかと言うと日陰が欲しいわけですし。

そうすると、重要なのは冬場の日当たり、ということになるんですが、これは「南→西→東→北」の順番になるわけです(僕の主観ですが)。


で、更に話を戻して、南道路の土地を手に入れることが出来なかったらどうしたら良いか、という話に戻ります。

南道路でない土地でテラスを真南側に作るのは考えものです。

真南の真正面に隣の家が建っている場合には、真南のテラスを作っても大抵は日陰になりますから、わざわざ南側に作る意味がないわけです。

真北に作るのもやめた方が良いです。自分の家の日陰になって寒々しいです。


困りましたね...。


で、どうするか、という話になるんですが、土地って普通「真◯◯」に向いてませんよね。

「南東」だったり「北西」だったりするんでは無いでしょうか。

実際問題としては、そこを上手く使うのが良いのでは無いかと。


つまり、南道路の土地を買えなかったとして、例えば北西向きだったりしたとしても、西側からの日差しは結構入ってくるわけです。

なので、隣の家に光を遮られる可能性の高い南側にテラスを作るのではなく、西日が望める道路側の「北西」側にテラスを作るのが正解なのかな、と。


例えば、こちら、北北西向きの土地のパターンを考えてみました。


最も光が当たらない冬至の日であっても、右隣からは、テラスの5分の1程度の面積には光が差し込みます(西側に大きな家が建っていたらNGなんですが)。

正午前後ではこの程度ですが、太陽がもう少し西に移動する時間帯にはもう少し日差しが入り込みます。

そもそも、この絵は最も南中高度の低い冬至の日の絵ですので、冬至を過ぎてしばらくすればもっともっと日差しが望めます。



なんだかまとまりがなくなってきてしまったのですが、テラスをどの方向に作るか、という点については、

・土地が南道路でない場合、(南側に隣の家が建っていたら)南にテラスを作るのはやめた方が良い(意味がない)。
・夏は結局暑いので、どっち向きでも大差無し。
・冬場は西日も結構ありがたい日差しとして使える(東側も午前中は光が差し込む)。

という位をベースとして、後は周辺環境を踏まえた上で検討するのが良い、ということでしょうか。


今回テラスの日当たり検証に使ったGoogle SketchUpのファイルもアップしておきますので、流用したい方は適当にカスタムして使ってみてください(ファイルはこちら:真北向.skp / 4方向.skp / 北北西向き.skp , 別途Google SketchUp=フリーウェアのインストールが必要です。Windows版もMac版もあります)。


Photo #1© , #2-4©juutakudesign.com



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こちらのテラス、中々良い感じです。


タイル貼りの床に、感じの良い木製のテーブルと椅子の屋外家具セット。椅子にはしっかりとクッションまで付けられていて、長い時間のんびりできそうな雰囲気があります。


かなりしっかりとしたオーニングが設置されているところも良いですね。



オーニングくらい、あっても無くても大差無い様な気もしますが、実はコレ、結構重要なポイントなのでは無いかと。


こちらの写真のお宅はスペイン バルセロナにありますので、日本の気候とはちょっと違いますが、オーニングがあれば、日差しの強い猛暑日やちょっと天気の悪い日でもテラスに出ていられます。


バルセロナは地中海性気候ですので、気候はこんな感じです。
・夏は平均最高気温28度前後、平均最低気温19度前後と、丁度よい暖かさ。
・冬も平均最高気温は13度前後あり、平均最低気温も4度前後はあるので、関東の真冬ほどは寒くない。
・降雨量は年間を通じてあまり多くなく、最も雨の多い秋でも月間90mm程度、その他の季節は月間50mm程度しか降らない(日本は極端に少ない冬の一定時期を除いてコンスタントに月間100mmから200mmは降ります)。

住みやすそうですね...。


こんな気候のバルセロナでさえオーニングがあったら随分違うと思いますが、況や夏は30度を超える日々が続き、ばんばか雨の降る日本であれば、オーニングの活躍度は更に上がろうというもの。

「日差しがあんまりにも強いからテラスに出たく無い」とか、「屋外家具やテラスに置いてある備品類を雨ざらしにしたくない」的な問題も解決してくれるわけです。

この位しっかりとしたオーニングがあれば、夏場のちょっとした小ぶりの雨だったら、テラスに出てのんびりしよう、という気にもなりそうです。

そういったことを考えると、例えばテラスを活用できる日数が週末のみ限られているとすれば、オーニングがあるか無いかでテラスの利用可能日数は格段に変わると思います。

何だかオーニングの絶賛大会みたいになってしまいました...。


テラスの逆のエリアは半屋内的な空間になってます。


せっかくコレだけ面白い感じの空間にしているのに、左手奥に見えるスチール製の棚のセンスの無さは何なんでしょうかね...。


ちなみにこちらのお宅、家の中も中々面白いです。

こんな感じのかなり立派な書斎があったリします。


この広さは相当贅沢です。

自宅にこの位広い書斎があったら良いですね。

というか、コレだけ広かったら、SOHO的に2、3人のメンバーで出来る仕事だったらここだけで出来てしまいそうです。

「書斎」というよりも「仕事場」という感じでしょうか。


この書斎、壁も中々面白い感じです。

"exposed wall"と説明されていまして、RC打ちっぱなし(exposed concrete finishとかいうんでしょうか)と似ている感じですが、素材がちょっと違いますね。

「剥き出しの壁」、「作りっぱなしの壁」という感じでしょうか。


写真には写ってないんですが、写真左手の天井は天窓になってまして、そこから自然光が取り込める様になってます。

上から降り注ぐ自然光の下で仕事が出来るというのは、気分的に中々良いのでは無いかと。


ベッドルームも、壁はやはり同じ仕上げになってます。


こちらは天窓は無いので明かりは照明だけになるんですが、この壁、照明を色々と変えてみたら、影の感じが変化して面白そうですね。

薄暗い感じの間接照明にしたら洞窟の様な感じで落ち着くベッドルームになるかもしれないですし、逆に、ものすごく明るい白系統の照明にしてみたら壁の雰囲気とのギャップが面白い感じになるかもしれません。

ベッドルームというごくプライベートな空間ですので、思い切って色々な照明を試して遊んでみるのも楽しそうです。


と、かなり取り留めの無い話になってしまいましたが、こういった「ちょっと変わったお家」というのも何かの参考になるかな、と思ってご紹介させて頂きました。

なりませんか?そーですか...。


Photo ©lucasfoxbcn



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