大空間を、壁ではなく機能や家具で区切って、それぞれのスペースが隔てられつつ緩くつながってるこういう感じ、好きなんですよね〜。
リビングとダイニング・キッチンの間を隔てるのは、こんな感じの巨大な本棚。
大きな本棚をパーティション的に使うこういうアイディア、以前にも何度かご紹介したことがあるんですけれど、空間の隔て方/使い方を柔軟に調整したり、模様替え的な手軽な感覚でスペースの繋げ方を変えたりもできたりするわけで、実用的な面でも何気にポイント高いと思うんですよね。
スマホやタブレットが普及して、なんでもネットとデジタル系デバイスでできてしまうこのご時世、昔ほどは、本や紙の資料も多くはなくなってきているのかも知れませんけれど、だからこそ、本当にお気に入りのものは、永久保存版としてしっかりと本棚に収めておきたい気がしますよね。その点、自宅のリビングにこのくらい大容量の本棚があれば、本や雑誌の類はもとより、年賀状や手紙、写真とか子どもたちの作った絵や工作作品にいたるまで、何から何まで一箇所にまとめて収めておくことができますから。
そういえば、うちの自宅も、リビングをこんな感じに本棚で緩く仕切って使ってみたらどうかなと思ったことがあったんですよね。といっても、うちの自宅のリビングは当然こんなに立派じゃないんですけどね。
趣味のためのスペースを微妙にたくさん作ってしまったせいで、一軒家にも関わらず極端に部屋数の少ない我が家では、将来子どもたちが大きくなって、それぞれが個室を必要としてきたときに、数少ない部屋をどう割り当てるのかが結構深刻な問題になってまして。で、とりあえず、あるタイミングでの部屋の子供部屋的なスペースとして、リビングの一画を使うという案もありなのかもなと。
せっかくなので、具体的にどんな感じになるのかを、SketchUpを使ってざっと描いてみました。
こちらが現在のリビングスペースのイメージ。幅5m弱×奥行き3.6mちょい。11畳弱といったところです。
右の壁際に2つ並べて置かれているのが子どもたちの勉強机。これは今現在、既に置かれてます。下の子はまだ1人で寝られないので、今のところは子供部屋は用意していなくて、ここをお勉強用のスペースにということで。
実際にはこの手前に、同じくらいのサイズのキッチンスペースとダイニングスペースがそれぞれありまして、全体で30畳ちょいのスペースになってるんですが、そこまで描くとかなり大変になってしまうので、とりあえずはここまでで。
で、このリビングの真ん中に本棚を置いてスペースを区切ってみると、こんな感じになります。
サングラスのおじいちゃんには特に意味はありません。
単に部屋の中央に本棚を置くだけだとあまり意味がないとは思うんですけれど、もしかして、これをもっと発展させて、半個室的な感じにまで持っていくという案はありかもしれないなと。
例えばこんな感じ。勉強机の上にロフトベッドを作って、
で、本棚の下部をカウンターテーブル状にして、その下にもベッドを作って、
このままだと、ちょっとプライベートスペースが確保できてなさ過ぎる気もしますけど、もしかして小学校の途中くらいまでは、このくらいの「半個室」な感じでもいいのかもとも思いまして。
左の部屋はこんな感じ。
かなり狭苦しい感じになっちゃいますけれど、まあ、ちょっと本を読んだり、夫婦2人でお茶するくらいなら、このくらいでも十分ですから。
椅子の向きは逆の方が良いですかね。
当面は右側のスペースを2人共有で使わせて、親の目も十分届くようにしておきつつ、もう少しプライベートが必要になってきたら、棚に背板を付けて完全な個室っぽくして、最終的には、左右の部屋を1人1部屋づつでそれぞれ使うようにする、なんて感じに段階的に使い方を変えていくというのはどうかなと。
過渡期の2人1部屋状態はもうちょっと検討が必要そうな気がしますけど、最終形の左右各1部屋の形は、狭小住宅の子供部屋アイディアとしては結構ありな気がしますね。
ということは、本当にこうする場合、残りの20畳ちょいのダイニング・キッチンをリビング・ダイニング・キッチンとして使わなきゃならないわけですか…。最初の写真のお宅の広大なリビング・ダイニングと、我が家のリフォームアイディアとの、このくっきりとしたコントラスト、なんかちょっと切ない気にさせられますな…。
( Photo #1-3 via TOM HURT , Photo #4-#9 ©juutakudesign )
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【曲面に囲まれた暮らし】サイロをリサイクルした円筒形の1LDK狭小住宅
この家、ちょっと住んでみたいですね〜。
一風変わった外観のこのお宅、なんでこんな形をしているかと言いますと、実はこの円筒形の躯体、元は穀物用のサイロなんです。
カンザス州の農場で実際に使用されていたこのサイロ、こちらにお住まいの建築家 クリストフ・カイザーさんが、ネットで売りに出ていたのを発見して、ご自身の自宅の躯体として流用することを思いついて購入したんだそうで。
カンサスからアリゾナのフェニックスまで、ピックアップトラックの荷台に乗って1800km近い距離を運ばれてきたサイロは、この場所で基礎の上に据え付けられ、
ドアや窓になる部分を加工され、
内部に柱を立て、梁を架け、フロアを作って、壁には断熱材を張って、内装が施されます。
1階はリビング・ダイニング・キッチン。
中央に置かれたダイニングテーブルは当然円形。キッチンもクローゼットも扇型にカーブして、壁に沿ってぴったりと収まりまっています。
リビングの頭上の吹き抜けを螺旋階段で上がった先がベッドルーム。
カーブした壁に囲まれたこういう空間って、包まれ感のような独特の面白い雰囲気がありますよね。
バスルームも当然扇型。
内部のスペースは実はこれだけ。つまりこちらのお宅、一軒屋にして1LDKなんですね〜。
ちなみに、具体的にどの程度の広さなのかを数字でみてみますと、建築面積230スクエアフィート/延べ床面積340スクエアフィートとのことですので、平米/坪でいいますと、建築面積が約21.4平米≒6.5坪、延床面積が約31.6平米≒19畳。若い方が住むような一人暮らし向け1LDK物件が専有面積30平米前後といったところだと思いますから、まさにそれとほぼ同等の広さ。これは一軒家としてはかなりコンパクトな部類に入るのではないかと…。
躯体が円筒形だから、丸く削られたコーナーの分、余計に床面積が小さくなるということもあるかと思いますが、仮にここに立方体の建物を建てたとするとどんな感じになるんですかね?
試しに計算してみますと、建築面積21.4平米ということは、円筒の半径は、床面積21.4を3.14で割ったものの√で約2.6m、直径だとその2倍ですから約5.2m。この土地のコーナーまできっちり使って四角い躯体の家を建てたとしたら、建築面積は5.2m×5.2m≒27平米≒8.2坪弱ということになります。
軽くSketchUpで描いてみました。
縦横各5.2m×高さ6mの立方体と、そこに内接する円柱です。
高さ6mはちょっと高すぎだったかも。
こちらが立面図。
実際のサイロの高さは、円錐形になった頭頂部を除くと5m〜5.5mくらいといったところでしょうか。
こうやって実際に比較してみると、確かにコーナーまで使ったほうが、純粋な床面積が広くなるのは当然ですけれど、実際に生活する上で使えるスペースという意味ではあまり変わらない気がします。つまり、逆にいうと、建築面積21.4平米/延床面積31.6平米(1:1.48)の円柱形の建物というのは、建築面積27平米/延床面積40平米(27平米×1.48)程度のスクエアな建物と似たイメージで使える広さがあるということなのかもしれませんね。
周りを曲面で囲まれ、内部を構成するものや置かれたものにも角が少ないということは、いろいろな面でのメリットも生みだしてくれると思います。
カーブした壁に沿って置かれた扇型のソファは、ただ並んで座るだけで、お互いが自然に軽く寄り添ったような位置関係にしてくれますし、周囲に尖ったものが少ないというのは、小さなお子さんや先端恐怖症の方に限らず、普通の人がリラックスしてなにげなく時間をすごすという、それだけのことに対しても、十分すぎるくらいのアドバンテージをもたらしてくれるのかなと。
リビングの壁面には、庭につながる幅2.7mの全開口スライドドア。
スライドドアの幅にあわせて扇型の縁側のようなスペースが設けられてまして、地面より50〜60cmほど高くなったこの部分で、そのまま座って寛ぐことができるようになってます。
庭の形も当然扇型。
直線で囲われていないこういう空間って、実際の広さ以上の独特の拡がりが感じられる気がしますよね。
そういえば、ずっと前に、アムステルダムの図書館の円柱型の本棚というのをご紹介したことがあったんですけれど、こういう形って強度的には結構期待できるでしょうし、土台と柱と梁の間の接合をしっかりとやっておけば、より高い耐震性能を必要とする建物としての用途にも使えそうな気がしますね。
普通の本棚に比べれば、限りなく倒れる可能性が低くて安全な気がしますが、万が一横転したら転がりそうで怖い…。重心の設計だけはちゃんとしておかないと。
「四角い土地を四角く使う」というのは、数値の上ではもっとも利用効率の良い土地の使い方だと思いますけれど、そこで実際に暮らす姿をイメージしつつ、そこに、数値には見えてこないさまざまなメリットを見出すことができるのならば、こういうのも選択肢の1つとしては十分ありなのかなと。
それにしても、手間とかコストとかをいろいろ考えると、なんにせよ贅沢な土地の使い方/家の建て方であることに間違いはないとは思いますけどね…。
( Photos via christophkaiser / SketchUp images ©juutakudesign )