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今回ご紹介する2枚の家具の写真、いつもこのサイトでご紹介しているような家具とは少し系統が違うんですが、自分自身のためにちょっとどこかに記しておきたいなと思った部分があったもので。


赤いプラスチックの作り付け棚と、


レトロな黄色い化粧合板のキャビネットです。

棚の方は作られた時期ははっきりとはわからなかったんですが、キャビネットの方は70年代のもので、結構古いものの様です。


正直言うと、こういうプラスチックであったり化粧合板であったりという系統の素材はあんまり好みじゃないんですが、先日ゼネコンに勤める某先輩と何気ない会話をしていたときの「ある話題」とどこかで重なる部分があって、それが妙に印象に残ったもので。


その話というのは、本当にどうという事も無い様な世間話。

「IKEAの家具はどうか」というような話を漠然としていて、内容としては、「安くてそこそこのものはある」「収納関係などはコストを抑えられるし悪くない」「要は使い方」「化粧合板がイマイチ好きになれない」「そういえば、40年くらい前に最初に日本に入ってきた時は、それなりの高級家具だったらしい」「30年くらい前に建てられたウチの別荘で当時買ったIKEAのソファを使っているけれど、しっかりしていて今でも問題なく使えている」というような感じの取り留めも無い話をしていました。


で、最後の「化粧合板」「高級」というあたりから、「そもそも、昔の時代の"高級"とか言ったって、今の価値観と全然違って、今の感覚、今の基準で考えたら判断を間違えちゃう」というような話になったんです。


例えば商品の価格にしたって当時と現在では為替レートが全然違うわけで、当時は輸入品はどんなものだってある程度高級だった時代です。

円ドルは1975年には1ドルが300円前後、1980年には1ドルが210円−240円程度という時代でした。

スウェーデン・クローナと円とのレートがどの程度だったかのデータが無いので正確にはわからないですが、仮に現在までに円ドルと同程度の相場変動が起きているとすれば、輸入品の販売価格は、1ドル80円の現在の時代の2.6倍〜3.7倍程度の価格ということになります。

当然販売戦略であるとかその他の色々な事情も入ってくるわけで、本来は単純な換算は出来ないんですが、上記の相場変動を使って単純に換算するならば、例えば現在30,000円で売っているIKEAのソファは当時であれば75,000円〜100,000円以上で売られていたことになります。

これはちょっと今のIKEAの「安い」製品のイメージとは違うかな、と。


そうすると、本当に当時のIKEAが現在に比べて「(30年の使用に耐えうるような作りをした)高級な」製品であったのか、それとも単に高度成長期末期の日本にとっての輸入品が高級品だっただけで、品質や素材的に現在のIKEA製品よりも特別優れているわけでもないものが、普通に現在まで使用できてしまっているだけなのか、というあたりの判断が上手くつかなくなってしまうわけです。


これについては、当時の製品価格であったりというデータがないので正確な判断が出来ないのですが、個人的にはこういうことであったのかな、という推測をしています。

・当時のIKEAのソファは、当時もそれほど高級なものでは無かった。
・ただし、当時はスウェーデンも日本も現在ほどの消費社会ではなく、数万円で販売しているソファが数年で壊れるなどということを許容していなかった(相対的に、現在の製品よりも耐久性のある製品を作り販売していた)。
・上記の製品を今現在の価値観を持つ人間の視点でみると「耐久性のあるしっかりとした製品」に見える(価格が高いのは単に為替相場の問題)。


今度は化粧合板の話を少ししたいと思います。

「化粧合板」という素材、今現在の僕のイメージとしては、「安い」けれども「傷がついたり剥離したりするとどうしようも無い」「10年20年と長く使いたいもの向きでは無い」という感じで、長く使いたい家具は無垢素材や、せめて集成材を使ったものが良いかな、と考えたりしています。

しかし、この「化粧合板」が出てきた当時にしてみれば(それはもう少し古い時代ではあるんですが)、かなり革新的、未来的な素材として捉えられていて、そういったイメージに基づいて好んでこの素材を用いていたりしたわけです。

そうやって改めて考えてみると、こういったものの考え方というのはあくまで個々の「価値観」であって、全然普遍的なものではない、もっと言うならば、「無垢素材が良い」なんていうのも長い目でみればほんの一過性の流行りのようなもので、今現在の自分自身のイメージや好みに囚われすぎてはいけない、ということに気がつきます(素材としての良し悪し、用途別の適材適所的なものは別の次元で当然存在していますが)。


さて、ここで冒頭のプラスチックの作り付け棚と合板のキャビネットの話に戻ってみたいと思います。

僕がこういうものを好きで無かったのは、一体何でなのか?

一番のポイントは「長く使えそうに無いから」なんです。

「良い家具を長く使いたい」。コレは自分にとっての重要なポイントの一つです。


プラスチックとか化粧合板の製品というのは、製品が出来上がったときが一番美しくて、使っていくうちにだんだんと傷がついたり劣化したりして駄目になっていってしまう。

無垢素材の製品は、製品が出来上がったときも美しいけれど、使っていって傷がついたり経年変化しても、それはそれで「味」のようなものが出てきて悪くない。


今回、本当にそうなんだろうか?とちょっと思ったんです。

本当に大事なことは「良いものを長く使えること」。

そのために一番重要なポイントは「素材」ではなくて「作り」なのかなと。

長く使うことを意識して設計されていること、その中には当然素材の選択というものも含まれるわけですが、その基本が守られているものが「長く使えるもの」なわけです。


何だか当たり前の話になってしまったんですが、合板だろうがプラスチックだろうが、長く使えるように考慮されて作られているものは長く使えるし、素材とか見た目なんて10年20年後の自分の好みがどうなっているかはわからないわけで、「良いものを長く使いたい」人は、「素材」や「見た目」でなく「作り」に着眼することがもっとも重要なのかなと。

こんなことを考えさせられました、というお話でした。


( Photo ©wreck_chords )



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このキッチンカウンター、ちょっと良い感じだなと思ったのでご紹介をさせていただきたと思います。



まあ、何の変哲もない感じのステンレス天板のカウンターなんですけど、よく見ると手前の部分がカウンターワゴンになってるんです。

その向こう側にある据え付けのカウンターと高さをぴったりとあわせてあるので、普通に置いてある状態だと奥の据え付けカウンターと一体になった作業エリアとして使えるんですが、実際は手前のカウンターは可動式なので、必要に応じて移動させてアイランドカウンター的に使ったり、ダイニングエリアに置いてカウンターテーブルとして使用したりできるわけです。

こうやって据え付けの作業エリアとしても可動式の作業エリアとしても、どちらでもしっかりと使い易い作りにすることで、キッチン内の作業スペースに随分余裕と柔軟性を持たせられているのでは無いかと思います。


幅についても、当たり前といえば当たり前のことなんですが、奥のカウンターと高さと幅をぴったり合わせてあるお陰で、デザイン的にも収まり的にもかなり良い感じになっているかな、と。

これが、例えば奥のカウンターと手前のカウンターの幅が5cm位違ったとするじゃないですか。

たったそれだけの違いでも、見た目は相当落ち着かない感じになってしまうと思いますし、カウンター脇の壁にかけてある鍋を取りに行く時にも、何だかその出っ張りが気になったり、実際にその出っ張りにぶつかりそうになったりして、動線という面でも精神的/物理的に相当影響があるのでは無いかと。

こういう当たり前の配慮がしっかりとされているデザイン、結構好きなんですよね。


木製の本体とステンレスの天板の組み合わせも良いですね。

キッチンカウンターというのは「作業場所」なわけで、何よりも耐水性、耐熱性、耐汚染性などに優れている必要があるわけです。

ウェットな感じの木材と無機質なステンレスの組み合わせというコントラストが結構好きというのもありますけれど、実用面、特に耐久性という面で、この組み合わせは合理的で優れているといえるのかなと。


このカウンター、一見何の変哲も無い感じですが、合理的なものの持つ「美しさ」が沢山詰まっていると思いますね。

(ちなみにこのカウンター、PITHY AND CLEAVERというサイトの記者兼編集者であるMaggie Hoffmanさんという方のキッチンのカウンターでして、PITHY AND CLEAVERに載せている料理は全てこのカウンターで行われているんだそうです。どの料理もとても美味しそうで食欲をそそられる感じで、「優れた作品は優れた作業エリアから生まれるものなのかな」などど思わさせられたりします...。興味がある方は一度覗いてみてください)


( Photo ©Maggie Hoffman )




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